手術室看護師のオペ看記

今更聞けないこと、気になった事を調べてみる。あと雑記。ダイエットの事。

全身麻酔と肥満 BMI35の壁は厚い

 手術をするにあたって、肥満というのはリスクしかない。麻酔科も一苦労である。いや、外科医も看護師も苦労している。

今回は全身麻酔における肥満のリスクについてまとめる。

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目次

 

肥満の定義

肥満とは体内に脂肪が過剰に蓄積した状態をいう。しかし、脂肪量を測定するのは機器が必要で手間なので、簡易的に身長と体重から計算される「BMI」を基準として用いられる事が多い。

 

BMIとは

日本語で言うと体格指数。BMI=Body Mass Index

BMI=体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算され、日本肥満学会ではBMI25以上を肥満と定義している。

身長160cm体重50kgを例にみると、50÷1.6÷1.6でBMI19.5となる。

 

肥満というだけで麻酔料金は約3割増し

BMI35以上、高度肥満となると麻酔が困難な患者という事で、麻酔管理料が高くなるのだ。

と、ここで一体どれくらい高くなるのか知らないので調べてみる。令和2年4月1日から適用されている診療報酬点数表によると、普通の全身麻酔手術で麻酔管理料6000点。それがBMI35以上で加算がつくと8300点に上がるらしい。他の心臓外科手術や腹腔鏡手術などの麻酔管理料をみても、おおよそ3割増しになっている。

 

ただし、BMI35以上というのは相当ハードルが高く、それを超えてくるような猛者は年に数人しかお目にかかれない。

 

全身麻酔を受けるにあたってのリスク

呼吸に関して

上気道閉塞しやすい・・・単純に脂肪がつきすぎているため気道が狭い、または重みで気道が狭窄しやすい。結果上気道閉塞しやすい。SAS睡眠時無呼吸症候群)の人が多い。

酸素消費量多い・・・体の体積が大きいため、その分酸素消費と二酸化炭素産生が多くなる。普通体系の人なら、麻酔導入後無呼吸状態でも数分はSpO290%以上キープできるが、肥満患者は容易に低下する。

横隔膜が圧迫されている・・・内臓脂肪で腹腔内の圧が高い。仰臥位で寝た状態だと、横隔膜も圧迫されるため呼吸がしにくい。圧迫のため肺胞の隅々まで換気しにくく、無気肺リスクが高い。

 そもそもマスク換気が難しい・・・麻酔導入後、呼吸が止まったらマスクで陽圧換気するが、上記の通り、気道が狭かったり、胸郭が重すぎたりで換気が難しい。陽圧換気できなければSpO2下がってようが即挿管である。が、気道も狭いため挿管も困難である。

抜管後も怖い・・・手術が終わって抜管しても油断できない。上記の理由から、自発呼吸でうまく換気できるかも怪しい。早々にヘッドアップして横隔膜の圧迫を解除するべき。

その他

心負荷・・・体重増加に従って酸素消費量増加・循環血液量も増加している。だから常に心臓・肺に負担が掛かっている状態となる。

 

 慢性的な低酸素血症・・・呼吸はしにくく、酸素消費量は多い。結果的に低酸素血症になりやすい。慢性的な低酸素血症だと、赤血球増加症を示し血液の粘性が増加する。結果、血栓ができやすくなる。

胃内容物の逆流・・・腹腔内圧が高いと胃内圧も高く、嘔吐もしやすい。誤嚥・窒息リスク。

単純にでかい・重い・・・褥瘡等の皮膚トラブルリスク。内臓脂肪が多すぎると消化器系の手術の時大変。脂肪しか見えない。整形外科の手術なんかで足を消毒する時、持ち上げるのが大変。

 

まとめ

 

色々書いたけど、とにかく最初の麻酔導入からの換気~挿管が一番の山である。ここがクリアできないと手術どころではないのだ。下手したら患者は死ぬ。だから、肥満患者を受け持つときは相当の準備と覚悟を持って臨むのである。